バイヨン到着~カンボジア・シュムリアップ~

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南大門をくぐり、バイヨン(アンコールトム)に到着した。

初めてここを訪れた時は、まるで違う惑星に迷い込んで

しまったかのような不思議な気持ちに囚われた。

日が陰っている時のバイヨンは、冷たく巨大な灰色の塊となり、

その頂きから見下ろす像の微笑みは、冷たく残酷な地獄の門番の顔にも見える。

しかし、ひと度、暖かい陽光がその顔を照らし出すと、

それは、暖かさの中にどこか淋しさもある、優しい菩薩の顔にも感じられる。

不落の都アンコールワットが他民族の侵入に遭い、そして陥落しなければ、

このバイヨンが作られることもなかったであろう。

神々が守護する都:アンコールワットの陥落は、当時の人々に大きな不安を与え、

王朝の求心力は、急速に低下した。

もはや、アンコールワットの抽象化された美と目の前にある現実は、人々の心を満たさなくなる。

人々は、より宇宙的で大きな観念を求め、一刻を争うその不安は、即仏的な偶像を求めた。

その結果できたのが、バイヨン(アンコールトム)の微笑であった、、、と思う。

地上から宇宙へ、、、民の不安を(完全には解消することなく、でも現実的支配には)繋ぎ止めるべく、

バイヨンは四方に不思議な微笑を注ぐ。

なるほど、アンコール王朝には、民心に通じた真に優秀な政治家(支配者)が、いたらしい。

何はともあれ、バイヨンに到着、、、頂きの微笑を目指して、次第に朝日を受けて

鮮明になるこの遺跡に再び登ることにした。